私たちは「教育しない」
- 2022年4月30日
- 読了時間: 2分
更新日:7月23日

世界で最も重要な投資は「人を育てること」です。芸術や科学、技術を創造し、家庭や企業、地域を構成し、法や制度をつくり、運用し、あるいはそのつくり手を選ぶのが「人」だからこそ、それを成熟させる「教育」は最重要だと考えられています。また、大規模で複雑な社会課題を根本から解決するためには、多分野・多職種による同時多発的なリーダーシップが不可欠であり、そのためにも「教育」は求められています。
しかし、私たちは「脱・教育」を提案します。矛盾と感じるかもしれませんが、「人を育てること」が重要だからこそ「脱・教育」なのです。大人が教えたいことを教える「教育」より、子どもがやりたいことをやる「自己実現」を支援するのです。
なぜなら、もはや「人を育てること」にとって、「教育」は「自己実現」ほど重要な手段ではないからです。
教育は他の人(家庭・学校・企業)にしてもらうことで、自己実現は自分が自分のためにすることです。興味に基づいた学習は、そうでないものと比較して学びの効果が高いことがわかっています。また自己実現は、専門的なスキルの向上、リーダーシップの発揮、他者との関係構築の基盤になり、その影響はIQ(知能指数)を凌ぎます。
一方で私たちは経験上、学生の多くが「やりたいことがわからない」と悩んでいることを知っています。実際に、日本の若者は、自身の個性や強み、目標や方向性などの価値観に自信を持てなくなる傾向が、他国よりも20-40%高いことがわかっています(*1)。私たちはそれを過小評価してはいけません。これらのことは、自己肯定感、生活の満足度、将来への悲観的な態度に影響し、遂には、日本の子どもの精神的幸福度(mental well-being)は先進国38カ国中ワースト2とされるに至りました(*2)。
これらの原因は根深く、構造的です。現代の情報化社会は、多くの学生に自由以上に迷いを与えました。近年のパンデミックは、自分を知る様々な機会と意欲を奪いました。加えて我が国では、文化的・歴史的に、私たちは自分の意見よりもコミュニティの雰囲気を尊重する傾向すらあります。もはや現代の日本に生まれ育つことは若者にとって恵まれたことではないのです。
私たちは「教育しない」こと、そして「自己実現」を支援することを選びました。私たちの最大の動機は、当事者の学生本人が「自己実現」を強く望んでいることです。そしてこれまで多くの学生から話を聴くなかで、やりたいことが何もない人はひとりもいなかったことです。
*1:18歳意識調査「第46回 -国や社会に対する意識(6カ国調査)-」報告書(日本財団、2022) *2:Report Card 16 “Worlds of Influence: Understanding what shapes child well-being in rich countries”(unicef、2020)
2022.4.30
(yearbook『Otonatachi MAKING THE ROAD 2022.3』より)
コメント