top of page

「生きやすくなった」という言葉が忘れられない

  • 執筆者の写真: Natsuki Sanko
    Natsuki Sanko
  • 7 日前
  • 読了時間: 7分

高井 瞳さん ライター

協力者インタビュー



1on1 collegeの利用者にインタビューを重ねてきた、「日本仕事百貨」ライターの高井瞳さん。運営するOtonatachi(オトナタチ一般社団法人)の求人記事を執筆したのが縁で、イベントなどに関わるようになりました。1on1を経験した若者たちは高井さんの目にどのように映ったのか、今度はインタビューを受けてもらいました。




自由に選択するための道具に


━━ 高校生や大学生たちはどんな目的で1on1を利用していたのでしょう。

​​

1年間あまりで7人に話を聞きました。年代的に就活が中心になるのかと思ったのですが、本当に人それぞれでしたね。

思考の整理の時間にしたいとか、自分が何を軸に生きて行きたいのかを知りたいとか。ある美大の学生は、自分の作品作りのために自己理解を深めたいと考えていました。

高校・大学と長期にわたり利用している人は、大学受験を経て部活、特に話すことがなければ趣味、そして就活と人生の節々での関心事がテーマでした。

​​​​​


━━ 話を聞いていて何か気づいたことはありましたか。

​​​​​​

皆さん共通して、自分が自由に選択するための道具として1on1を使っているように見えました。インタビューを通して強く思ったのですが、今ってすごく自由だけれど、自由がゆえに、不自由を感じているのではないでしょうか。



━━ 詳しく教えて下さい。

​​

ある大学生は1on1を、「自由になれる場」「自由に選択できる場」と表現していました。

 

彼女はアメリカの名門大学と、リベラルアーツ教育が充実しているカレッジの両方に合格しました。素晴らしいことですが、どちらを選ぶか気持ちが揺れていた。そこでメンターと対話しながら、両方の大学の条件を細かく挙げ、優先順位を整理したそうです。

 

その結果、彼女が選んだのはカレッジでした。自分が名門大学にひかれていた理由は、知名度と社会的評価、地理的条件だけであることに気づいたのです。



━━ それが彼女の自由な選択だったのですね。

そうです。「カレッジを選んだ自分のことがすごく好き」と話していたのが印象的でした。

 

自由に選んでいいと言われていても、社会的評価とか「親が何を期待しているか」「みんなはこうしている」とか、無意識にがんじがらめにされてしまっています。

 

メンターは世間の当たり前とは関係なく、「そもそもなんでそう思ったの」「本当にあなたがしたいことなの」と質問を投げかけてきます。答えを思考しているうちに、自分が何に縛られているのか見えてくるようでした。

 

高校教師になることを決めた大学生が、「どんな大変なことがあって例え辞めることになっても、この道を選んだ気持ちは本当だから後悔はしない」と話していたのも心に残りました。本当に自分で選んだからこそ、言えるのでしょう。

​​​​

自分だけに向き合ってくれる存在


━━ メンターが果たす役割は大きいですね。

​​​

重要なのは聞き方だと思います。メンターは意識的に、学生が縛られている常識や偏見に気づけるような質問をしているのだと感じます。

例えば、利用者が「今月はゲームしかしなかった」と話したら、「それはあなたにとってどういう時間だったの?」と聞いてくる。フラットに考えて答えを探せる問いです。これが「なんで勉強しなかったの?」だったら、まず前提がネガティブですよね。罪悪感が生まれて、言い訳になってしまう。

どんな時もジャッジせず聞いてくれるから、自分の本心と向き合えるようになるのだと思います。

​​​


━━ 家族や友達だったら、つい余計な口出しをしてしまいそうです。

​​

そうですね。「これを話したら親はどう思うか」とか「友達の大切な時間を使ってしまうから相手の話も聞かなきゃ」とか、本人もいろいろ気になります。相手に嫌われないように内容が遠慮がちになることもあります。

 

その点、メンターはオンラインを切れば顔を合わせることはなく、生活に関わってきません。だからこそ自由に話せるのだそうです。



━━ メンターはちょっと変わった、でも特別な存在なのですね。

​自分に強く興味を持ってくれる点が、利用者にとって特別なのでしょう。毎回、自分のことを心から知りたいと思ってくれて、その気持ちが伝わるから、何でも話したくなる。しかも評価が伴わないから、考えを素直に口にできるのだと思います。

​​​​

━━ そうは言ってもほとんどの方は月1回、1時間だけです。

​​

自分にすごく興味を持ってくれる人が1時間必ず話を聞いてくれる。その時間は自分だけに向き合ってくれる。そんな経験はなかなかありませんよね。

 

家族や友達とはたくさんの時間を過ごしますが、その分情報がありすぎます。細かい部分は意外に忘れたりするものです。

 

メンターは毎月、その月のハイライトの部分をしっかりと見続けています。

 

ある大学生は、「自分の軸がない」というコンプレックスを抱えていました。就活を意識して悩みを深めていたところ、メンターが学生の過去の発言を振り返り、実は持ち続けていた軸に気づくきっかけになったそうです。

 

月1回は少ない気もするけれど、結構な影響を及ぼすことができると思います。



━━ 無料で1on1を受けられることが、1on1 collegeの特徴です。

​​

その意味は大きいと思います。もし親や学校がお金を払えば、利用者は話すときに親や学校を意識するでしょう。自分のバイト代から払えば、アドバイスや目にみえる成果を期待してしまうかもしれない。「お金をもらっているから話を聞いてくれている」とも感じるでしょう。

 

相手がメリットや見返りもなく自分の話に耳を傾けてくれているという感覚。それが利用者にとって大きな価値であることを、インタビューを通して感じました。​


​​​​選ぶことが不安だった学生時代


━━ 高井さんが高校生や大学生だったら、1on1を利用しますか。

絶対やりたいですね。

高校、大学時代ってすごく不安じゃないですか。子ども時代はずっと親が決めたレールを走って来たのに、ある時から急に自分で選んでいいと言われる。大学進学やサークル、就活だってそうです。

 

自分のことを全くわかっていないのに、決めなければいけないことが多すぎる。しかも結構、人生の大きな決断につながったりします。

 

​​​

━━ 選択に悩んだのですね

人生を選んでいくには自分のことを知る必要があるのに、日本の教育ではあまりそうした時間を持つことはないですよね。

 

いい大学に行かなきゃいけないからとか、サークルの友達がコンサルに就職するから自分もとか、そんなふうに選択してしまいがちです。

 

もうすぐ子どもが生まれるので、自分の子どもには絶対にやってほしいな。


━━ お子さんの1on1の相手になったらどうですか


やっぱり親子の関係でやるのは違う気がします。子どもが親の期待を感じ取ってしまうかもしれません。フラットに接するのはどうしても難しいですから。

 

1on1はただのスキルじゃなくて、やはり立場というものもあると思います。「海外の大学に行きたい」と言われても、親だったら学費のことを考えちゃうじゃないですか(笑)



自分で選び取った人生を歩むということ


━━ インタビューした皆さんは、高井さんの目にどう映りましたか。

みんなキラキラしているというか、かっこいいですね。毎日の生活、そして人生を心から楽しんでいる気がします。

自分で自分の人生を選び取っているみたいな感覚を、身につけているからだと思います。だから何か失敗しても誰かのせいにすることはないし、後悔しないで次に進めるのでしょう。

​​

​​​

━━ 1on1 collegeは学生が対象です。卒業後はどうするのでしょう。

​​

ずっと利用し続けたいという声をよく聞きます。不安だからではなく、自分にとって価値があるからという理由です

私が聞いたところ、「自分の近くにメンターを探します」とか、「自分で自分に1on1をするようにしました」とか。「心の中に(担当メンターだった)長谷川さんを飼っています」という人もいました。この経験を通して、自問自答したり自己理解したりする癖が身についた人が多いのかなと。

​​​


━━ 1on1に興味を持っている人たちに伝えたいことはありますか。


経験した皆さんの「生きやすくなった」という言葉が忘れられません。

周りにも勧めたいけれど良さを説明するのは非常に難しいと、歯がゆい思いをしているそうです。どこかの大学に受かったとか就職できたとかが効果ではありませんし、数字で表すこともできないですから。やはり体験してみるのが一番だと思います。


(2025.11.21)

 聞き手:太田  敦子

コメント


bottom of page