2025.3.1 (SAT) 13:00-16:00 @KS8神田会議室
イベントレポート
Otonatachiのあたらしい拠点で、
はなして、のんで、あそんだ1日
高校生・大学生のための無料1on1ミーティング『1on1 college』を提供しているOtonatachi(オトナタチ一般社団法人)が、横浜市内の住宅街に新しい拠点をオープンしました。7月5日には、オープンを記念して誰でも自由に立ち寄れるオープンキャンパスを開催。Otonatachiの活動に興味を持つ人や、1on1を活用していた卒業生など、いろいろな人が集まり、はなして、のんで、あそんだ1日。今回は、そんなイベントの様子をレポートします。
みなとみらい線の元町・中華街駅。
中華街を背にして、元町通り方面へ。緩やかな坂が続く道には、お花屋さんやサンドイッチ屋さん、古着屋さんなど、寄り道したくなるような個人店が並ぶ。
事前に「近道」として教えてもらったトンネルを抜けると、15分ほどで目的地に到着した。
Otonatachiの拠点は、おばあちゃんの家に遊びにきたような、懐かしさを感じさせる一軒家。

前に住んでいた人の表札がそのまま残っているのもおもしろい。
近づいて、よく見てみると「Otonatachi」と書かれた名刺が1枚、郵便ポストに貼られている。

「あー!どうも、いらっしゃい。場所分かりましたか?」
ドアを開けると、Otonatachiのみなさんが迎えてくれた。イベントまでまだ時間があるとのことで、代表の長谷川さんに部屋の中を案内してもらうことに。
「2019年の創業からずっとリモートで活動していて。メンター同士も含めて、Otonatachiに関わる大人たちがもっと対面で会えるようにしたいと思って、今回拠点を設けることにしたんです」
1階は、玄関を挟んで左右に台所と畳の居間。2階には、学生とのオンラインの時などに使っているという部屋が2つ。
たくさん部屋があるけれど、普段はみんなで1階の居間に集まって仕事をしているのだそう。

机の上には、Otonatachiのメンターで、パンを焼くのが趣味というたみさんの手づくりパン。

新拠点をオープンしたお祝いにと、長谷川さんの友人が届けてくれたケンタッキーのファミリーパックも並んで、とっても賑やか。
「拠点ができたって報告したら、いろんな人がおめでとうって言ってくれて。これってめでたいことなんだって、改めて感じました」と笑う長谷川さん。

しばらくすると、少しずつ人が集まってきた。
Otonatachiのアニュアルレポートを手伝っている真美さんは、「1個くらいあってもいいかなと思って」と、花瓶とお花をプレゼント。

プロボノとして関わっている黒澤さんは、娘さん2人と一緒に大きな包み紙を持って登場。
「自分のために買ったんですけど、やっぱりここに飾ってもらいたいなと思って」
「破って開けちゃってください!」と促され、ビリビリッと包み紙を破く長谷川さん。

中身はなんと、『SLAM DUNK(スラムダンク)』のイラスト画。見ていた周りの人たちからも「おおー!!」と声があがる。
スラムダンクは、長谷川さんと黒澤さんの愛読書なんだとか。
できたばかりのシンプルな空間に、絵や花瓶が飾られて、少しずつ華やかな雰囲気になっていく。こうやって、色々な人たちの想いが集まって、Otonatachiの拠点が育っていくんだろうな。

だんだんと人が増え、賑やかになってきたところで1つ目のメインイベント。
「そろそろやりましょうかー」という長谷川さんの和やかな掛け声で、みんなが台所に集まってきた。

白く塗られた台所の壁には、Otonatachiが学生向けに無料で提供している1on1サービス『1on1 college』のロゴ。1on1の最初の「1」の部分だけ空白になっている。
「1on1 collegeのロゴに描かれている一つ目の『1』は、12種類の『1』が集まってできているんです。これは、僕たちが出会う学生の多様さを表していて」
「今日みたいに、いろんな人が集まってくれたときに、好きな色でその人なりの『1』を描いてもらってこのロゴを完成させられたらなって思っています」

「書きづらいと思うので、まずは僕から描いちゃいますね」と長谷川さん。
黄色いペンキをつかって、おおきくひらがなで「わん」と書きつける。「わん」は長谷川さんが学生時代によく行っていた思い出の居酒屋の名前とも掛かっているのだとか。
続いて、Otonatachiのたみさん。「わん」の文字の下に青いペンキで「世界はもっと広い‼︎」の文字。
「自分も学生も、視野を狭くしたくないなと考えていて。僕たちのやっている1on1も、世界の広さを感じられるきっかけになればいいなと思って書きました」

SNSでイベントの告知を見て来たというタムラさんは、「誰かがこのあとを続けて書いてくれたらいいな」と、緑色で「みんなで」の文字。
「自分はいま62歳なんだけど、若い人たちのためになにかできたらいいなと思っていて。Otonatachiの活動を知って、自分も何かのかたちで関わりたくて、SNSをフォローしているんです」
しばらくすると、タムラさんの文字のあとには、続けて「考える」という文字が足される。
文字が重なったり、色が混じったり。お互いの文字や絵が少しずつ影響しあって、一つの大きな作品になっていく。


自分の居場所はある?という問いから、そもそも居心地がいい場所ってどういうところ?という話題へ。
「電車で座っているとき、隣の人との距離が近いと自分の境界線に入られたようで、居心地が悪いと感じるな」
「そう考えると、自分は割と、人との間に壁をつくっているかも。壁がないのは娘くらい」「逆に三鈷さんは壁はないの??」
「話がズレるかもですけど、属しているコミュニティーが変わったタイミングでポツンと一人になったと感じたときがあって。寂しさもあったけど、心地よさもあって。そのときに、自分の居場所は自分自身で、そこからいろんなコミュニティーを訪ねていってたんだって思ったんですよね」と三鈷さん。

お互いの考え方を伝えて、確認して、言葉にする。そんなプロセスを通じて、二人の考えが深まっていくのが面白い。
そんなラジオの収録中も、子供たちが隣の部屋でかくれんぼをしていたり、ビールを飲みながらおしゃべりを楽しんでいる人たちがいたり。それぞれが自分のペースで過ごしている。

ラジオ収録が終わると、座談会。
ファシリテーターは、求人サイト「日本仕事百貨」で働く長島くん。

もうすぐ30歳を迎える三鈷さんと、参加者の人たちと一緒に30代について“ゆるーく”語り合いましょうという会。
「1年前に日本仕事百貨でOtonatachiの求人をしたのをきっかけに、ご縁ができて。今回のイベントでも何か一緒にしたいねと話している中で、今、自分が興味を持っている年齢についてみんなで語れたら面白いかなと思いました」
この6月に30歳になったばかりの長島くん。年齢について考える機会も増えたんだそう。
「年齢って不思議だなと感じることが多くて。学生からみた30歳はすごく大人に感じるだろうし、会社内だと中堅、若手。立場によって全然違う。この会を機に、どういうふうに年齢を捉えると心地よく生きられるのかをみんなで考えてみたいです」
「まず聞いてみたいのは、30歳ってなんか特別な感じを持ってますか?」と長島くん。

手を挙げてもらうと、特別感がないというのは、少数派。ほとんどの人が特別感を持っていたみたい。
30代を前に会社を辞めて旅に出たという女性は、「新卒の時に入った会社が大手だったからか、30代の前までに1回は転職しないとキャリア的に良くないとか、結婚しなきゃとかそういう考え方の人が多くて。今振り返ると、周りからつくられたイメージで、30代に対する特別感を持っていました」
「でも、仕事をやめて旅をしたときは、そういう特別感は抱いていなくて。20代を過ごしてきた自分に対してお疲れさまと労うような感覚。一人で登山をしながら、20代前半っていろんなところに頭をぶつけながら歩いていたなって当時を思い出したり。そういう振り返りの時間があったから、30代はいろんなものを削ぎ落として身軽になれそうだなと思えました」

「そういう時間を持つのって、大事だよね」、「30歳に対してワクワクできるっていいな」という人がいたり、「自分は日常の中で気づいたら30歳になってたなー」という人がいたりと、反応はさまざま。
そもそも30歳になることに対して、みんなはワクワクしていたんでしょうか?
メンターの三鈷さんは、20代の前半よりも、30代が近づいた今の方がポジティブに捉えられているんだそう。
「Otonatachiに入って、年を重ねて楽しそうにしている大人が周りに増えて。そういう人たちを見ていると、30代はどんなふうになっているんだろうって楽しみになってきました」

1on1 collegeを卒業したばかりの女性は、「どちらかというと30歳になることに悲観的かも」と素直な気持ちを話してくれる。
「大学まで、人前に立つ仕事をしていて。女性はとくに、そういう業界だと年齢がシビアに見られがち。たとえば、自分が高校生じゃなくなったときとか、年を重ねる節目で見られ方が変わるのを感じることがあって。年を重ねるってそういうことが増えていくのかなって」
一方で、「自分は、独立してあんまり年齢を感じなくなったな」と話してくれたのは、60代の男性。

「学生時代は、学年っていう明確な区切りがあるし、会社に入ると役職とか入社年次で年齢を意識する機会が多かった。けど25歳で独立してからは、年齢に対する考え方が全然変わって、意識することはほとんどなくなったな」
「最近は目が見えづらくなったり、白髪が生えたり、体の変化から年を感じさせられることが増えたけど(笑)」
年齢って、普段は気を遣うテーマ。でも、今回のこの場所は、年齢も生き方もまったく違う人たちが集まって、自分たちの意見を自由に話し合えている。そんな気持ちのいい時間でした。

その後も、みんなで集まってそれぞれの1年間を振り返ってみたり。お菓子やパン、ビールを片手にそれぞれが自由に会話を楽しんだり。
気がつけば、あっという間に夜も更けてお開きの時間に。
Otonatachiに関係のある人もない人も、誰でもふらっと立ち寄って、自分の家のようにくつろいでいる姿が印象的でした。
いろんな考え方の人たちが集まっていて、それぞれがお互いの考えを尊重し合っている。それがこの1日の居心地の良さに繋がっていたんだと思います。
拠点ができたことで、これからOtonatachiの活動も幅がさらに広がりそう。これからの活動も、楽しみにしていてください。
(2025.7.21 高井瞳)
